契約結婚の終わらせかた




おはる屋に着くと、ちょっとした変化に気づいた。


右隣の空き地にトラックが何台も横付けされ、プラスチックの囲いがぐるりとされて中が見えなくなってる。


(何だろう?何ができるのかな)


その空き地は以前宅地で、古い家が取り壊されてから何もなかった。お店でも作るんだろうか?


(コンビニだったら嫌だな。もろに影響が出るもんね)


そんなふうに心配してると、伊織さんが同じようにジッと見てるのに気づいた。


「あの、伊織さん。私はおばあちゃんに挨拶してきますね」

「ああ」


伊織さんがやたら熱心にその土地を見てたから、誘うのも気が引けて。私だけでおはる屋に入ろうとした瞬間、誰かとぶつかりそうになって慌てて避ける。

けど、草履と着物だと洋服ほど動きに自由が効かない。よろめいた私を支えてくれたのが、いつの間にか後ろに立った伊織さんだった。


「おや、これはこれは。またお会いしたねえ」

「え……」


以前聞いた憶えのある声に顔を上げると、伊織さんの親族と名乗ったあのチャラい男がおはる屋の中でニヤニヤ笑ってる。


(嘘……なんでこんなところにいるの!?)


身体を強張らせて呆然としていると、私を立たせた伊織さんがその男を呼んだ。


「正男(まさお)、何の用事だ?」

「呼び捨てかい、伊織さん。ずいぶんいいご身分になったもんだよな?」


ニヤニヤと笑った正男という男は、口元をゆっくりと歪めた。


「なに、ほんのご挨拶さ。こんな昭和の遺物なんざ、下らねえってな」


ガン、と正男は近くの商品棚を蹴る。


「近いうちに無くなるんだ。さっさと店じまいすりゃいいものをな」