せっかくだから、と私は着物を着て挨拶回りに向かうことにした。
実はクリスマス前に自分へのプレゼントで、葵和子さんと一緒に選んだ洗える着物。
ポリエステル製だけど、帯もセットで格安で買えた。
薄紅色の無地の袷着物に、灰地に小さな花柄の帯。お正月だから、と髪も結い上げて簪(かんざし)を挿す。
時間は掛かったけどくるみさんの指導を思い出しながら、何とか自分なりに着付けできた。
マンションから出て駐車場に向かう時、案外着物って寒いんだと反省しながら身体を震わせる。
(まずいなあ……またぶり返したらどうしよう)
着物を選ぶ時には上着のことまで考えてなかった。自分の迂闊さを反省しながら歩いてると、急に伊織さんが足を止める。
そして、彼は私の肩にバサッと何かを羽織らせた。
「これを着ておけ」
「あ……はい」
きょとんと頷くと、伊織さんはふいっとそっぽを向いてすたすたと先へ歩いてく。何だろう? と不思議に思って視線を下へやれば、目に入ったのが紫色の羽織(はおり)。上品な紫色に百合の花があしらわれてる。
(これ……私のためにわざわざ?)
慌てて羽織に袖を通すと、袷にぴったりの色合い。これならもっと華やかに見える。
――もしかすると、病み上がりの私を気遣ってくれたの?
伊織さんの不器用な優しさに、胸が暖かくなる。
(これ以上好きにさせないでほしいのにな)
喜んでしまう私も、大概バカだけど。
私はそっと目元を拭うと、伊織さんを追いかけた。



