契約結婚の終わらせかた








ゆっくり目を開くと、ポタポタ、と落ちる液体が見えた。


(ここは……)


目を数度瞬いて視界をはっきりさせれば、白い天井と白い壁が目につく。ポタポタと落ちる液体はチューブを通じて私の腕に繋がってた。


「病院……?」


かすれた声で囁くように声を出すと、ガバッと顔を上げた人がいた。


どうやら、ここは病室で私はベッドで点滴を受けているらしい。そして、折りたたみ椅子に座ってたひと――空くんが立ち上がる。


「碧姉ちゃん、気づいたんだね。気分は?」

「ちょっとだるいけど……私、どうしたんだっけ?」

「雪の中で埋もれて倒れてたんだよ。たまたまオレが通りかかったからよかったけど……それでも酷い肺炎を起こしてるから、2·3日入院しろって」

「そんなひどくない……ごほっ!」


自分では平気なつもりだったけど、少し話しただけで喉元から胸が痛んで激しく咳き込んだ。ぜえぜえと苦しい呼吸を繰り返して、空くんに背中をさすってもらう。


「空くん、ありがとう……もう、いいよ。後は大丈夫だから」

「んなことないだろ? おばあちゃんと鈴木さんって人がもうすぐ来るけど、それまで一人にはできない」

「でも……空くんだって迷惑でしょう? 私はただの駄菓子屋のお姉ちゃんなんだから。そこまでしなくても」

「迷惑じゃない!」


空くんは、叫ぶように答えると。私に体を近づけてくる。


「オレは、碧姉ちゃんをただの近所の姉ちゃんと思ったことは一度もない! 碧姉ちゃんしかオレには女じゃなかったんだからな!!」

「え」


戸惑う私を、空くんはギュッと抱きしめる。そして、数度の躊躇いの後に告げてきた。


「オレは――碧が好きなんだ! オレにはあんたしかいないんだよ!!」