契約結婚の終わらせかた




その直後、だった。


ふわふわと雪が降り始めたのは。


「……綺麗」


降り積もる雪をぼんやりと眺めながら、時間が過ぎるのをただ待つ。


21時15分……。


(大丈夫……伊織さんはきっと来てくれる)


22時28分。


(私は、伊織さんを信じる)


23時55分……。


(伊織さんは……きっと気づいた……だから、今日……私を)


バカな私は、信じたかった。


伊織さんはこの日の意味を知って誘ってくれたのだと。


今日、12月25日は私が雪の中おばあちゃんに拾われた日。

私は、この日を誕生日として新しい戸籍が作られた。


伊織さんは……きっとわかってる。だから……信じる……信じたい。


雪が、降り積もる。


私の周りにも、私の体にも。


寒い……体が冷えてガタガタ震えがきた。頭がガンガン痛み出すけど、ここを離れたら伊織さんと会えない。彼が見つけてくれない。


きっと、伊織さんは今日来てくれる。


23時58分。


きっと……来る。


23時59分。


伊織さん……。


50秒……

55秒……。


伊織さん。


58秒。


信じたかった……。


59秒。


午前0時。


(伊織さん……どうして……)


ポタポタ、と雪の上に熱い滴が落ちる。頬を流れる涙がやけに熱くて冷たい。


(ううん……伊織さんは悪くない……私が勝手に期待してがっかりしただけだ……私の中だけで始まって終わっただけ……)


でも、どうして。こんなにも絶望を感じるんだろう。


激しくなった吹雪の中で、滑稽で惨めな自分を嘲笑う。


「ごほっ……」


(息が体が熱い……)


誰かが私を呼んでると感じた瞬間――意識が急に途切れた。