部屋の姿見に写ったピンク色のワンピース……。薄い生地はフワリと広がって、まるで蝶のように舞う。
(私には似合わない……よね、やっぱり)
滲んできた涙で視界が白く濁り、ゴシゴシと手のひらで拭う。
葵和子さんと会った時、プレゼントさせてくださいなと選んでくださった服。よく似合うわと微笑んだ彼女には悪いけど、とても自分に合うとは思わない。
それでも……愚かな私は、期待をしている。伊織さんに少しでも可愛いと思って欲しいって。
慣れないメイクを必死に施して、髪もハーフアップにしてる。おはる屋でのパーティーの後は、伊織さんと待ち合わせしてるから、直ぐに行けるように荷物を点検する。
大きめのバッグに入った二つの紙袋。
“これを、伊織に”と葵和子さんから託されたものと。
葵和子さんと選んだ、私から伊織さんへのクリスマスプレゼント。
伊織さんにすれば迷惑かもしれない。でも、初めてで最後のクリスマスだから。誕生日は知らないから……せめて、これだけは。
きっと、近いうちに別れが来る。伊織さんが本当に愛するべき人が誰か気付いて、正しい決断をするんだ。
それぞれ、本来いるべき場所へ戻るだけ。
私は、伊織さんの選択ならどんなことでも従う。それが、私にとって彼のために出来る唯一のことだから。
彼が本当に幸せになるために、私は喜んで身を引こう。
そして、二度と会わない。
それが、誰もが幸せになれることなのだから。



