契約結婚の終わらせかた




家政婦をしていたのは高校時代の唯一の親友で、困ってるならば手伝ってあげたい。と申し出てくれたから信頼して任せた。


とても仲がよく何でも相談できて、気心の知れた唯一無二の親友。信頼も厚く家族よりよほど信頼できる。


そして、今は唯一の味方。


そんな相手が裏切るなど、どうして考えられるだろう?


実家と嫁ぎ先と勤務先とマンションと。四ヶ所を飛び回る葵和子さんは、1日2~3時間の睡眠などざらで。我が子を見られるのが、夜に眠ってしまった時間のみ。


それでも、親友でもある家政婦から1日にあった出来事を聞くのは唯一の楽しみで。我が子の成長を励みに、必死に頑張っていた。


けれど、おかしいと感じ始めたのが伊織さんが八つになろうという頃。


あれだけ子どもらしくやんちゃだった伊織さんが外に出ず、常に怯える様なおどおどした様子を見せるようになったこと。

それまで順調に育っていた体も成長が鈍り、育ち盛りなのに1年で2センチしか身長が伸びてない。青ざめた顔に目だけがやたら落ち着きなく動く。ちょっとした物音に驚き怯える。


それだけでない。見覚えがない請求書がやって来たり、あったはずのものがなくなってたり。更には家具の位置まで変わる違和感。伊織さんが“知らない男が来た”と話した時、家政婦の友達は模様替えだから、人手を借りるために入れたのだと話した。


用心深く注意を払い様子を見ようとするけれど、友達はいつもと変わらない態度で微笑む。

伊織さんから聞き出そうとしても、怯えて決して口を開こうとしない。


よそに移そうにもあてがなく、信頼できる人間がいない上にお金がない。しかし、我が子の危機だと葵和子さんが何とか時間を捻出して警察に相談に行き、しかるべき機関へと保護を求めようとした矢先――。


伊織さんが瀕死状態となり、すべてが発覚した。