そんななかで、結婚して二年目に葵和子さんは妊娠。それでも増える借金に追われるように働き、体を壊しかけても誰も同情もしない。
汗水流して稼いだお金は全て実家に渡すも、それは一円残らず贅沢の為に使われて。
あろうことか、和泉家は葵和子さんの懐妊をダシに桂家に更なる援助を要求し始めた。
そのため、葵和子さんの肩身はますます狭くなる。
出産直前まで働いた葵和子さんは、一人で病院へ行き一人で伊織さんを産んだ。 歓迎されなかった伊織さんの誕生。夫でさえ、顔を見に来てくれない。
せめて子どもが生まれればと夫への期待は、その瞬間に断たれて。葵和子さんには虚しい絶望しか残っていなかった。
かわいそうな息子……でも。どう接すればいのかがわからない。愛されたことがないから、愛し方がわからない。
夫に似た我が子を見るのが辛く、それでもこの子は私だけと独りぼっちで必死に育てた。
けれど、実家の借金の金額が増え続ける中、いつまでも子育てだけに関われない。葵和子さんは断腸の思いで家政婦を雇い、伊織さんの世話を任せ働きに出た。
そして、和泉が跡取りを葵和子さんが産んだから、と莫大な金額を桂家に要求。両者が争う醜さ。そして和泉が葵和子さんにタカる現実。
やがて、義理の息子やその子ども達に伊織さんが激しいいじめを受けていたと発覚。 葵和子さんはやむなく伊織さんを離れたマンションに隠して育てることに決めた。
けれど、それこそが伊織さんの不幸の始まり。
まさか――密室を利用して家政婦が伊織さんを虐待しているなど。多忙な葵和子さんは夢にも思わなかった。



