私は、事情を簡潔に話した。


おばあちゃんのお店の売り上げが芳しくないこと。

固定資産税なんかの費用や維持費、そして借金の利息の支払いで大赤字のこと。


だから、それを補うために深夜のファミレスでバイトをしていることを。


借金はおばあちゃん自身が作ったものでなく、信頼してた人に騙され背負わされたものだとも。


「……なるほど」


男性は口元に手を当てて何かを考えているようだった。


でも、こんなことを訊いてどうするんだろう? 自分に関係あるって言ってたけど……まさかね。


男性は借金の額や具体的な売り上げの提示を求めたから、おおよそだけど教えておいた。


「なるほど。よけいな支払いがなければ、一人で生活をするには困らないか」

「一人でって……何を言ってるんですか。まさかおばあちゃんになにか」

「違う」


今更ながら、警戒心が湧き上がってきた。もしやこの人は借金取りか、よからぬことを企んでる犯罪者?


少しずつだけど、体をずらし距離を離していく。いざとなったら、バッグで顔を打って逃げよう。ギュッとバッグの持ち手を握りしめていると、男性がこちらを向く。


そして、私に衝撃的なひと言を放った。




「あんたがオレと結婚すれば、問題全てを解決してやる」

「――は?」


私が意味が解らずにポカンとしていると、彼は更に言葉を重ねた。


「オレと1年だけ、契約結婚しろ。ただし、愛情など期待するな。人前でにこやかにするだけでいい。それだけであんたの悩みを解消してやろう」


「…………」


はいいいい~~っ!?