契約結婚の終わらせかた




彼は15で美しく成長した葵和子さんを見初め、借金を弁済する交換条件として、亡くなった妻の後添いとして迎えたい、と申し出た。


和泉の親族は唐突に振って湧いた縁談に諸手を上げて喜び、二つ返事で承諾する。


当時葵和子さんは女子高に通っていたため、卒業を待って婚姻を整えることが約束された。


そして、桂家からは嫁がみすぼらしい格好をしては、と葵和子さんへ数々の援助がなされた。彼女は桂家へ嫁ぐため、それまで機会がなかった教養を身に付ける教育がなされ、高価な着物もたくさん贈られる。


もちろん、それを黙って見ている和泉の人たちではなく。かなりの確率で援助は葵和子さん以外の手に渡り浪費された。


家を助けるために学校に内緒でアルバイトをしながら、桂家の教育を受け家の采配も全て葵和子さん一人がしなければいけない。 ナンシーさんが亡くなってから、家事や何やらは全て葵和子さんが負担してきたからだ。


忙しく息詰まりそうな毎日。本当は夢だってあったのに、15という年で自分のせいでない借金のせいで、30も上の知らない男に嫁がされるしかない未来。


贈られた着物を着て桂家へ向かう道すがら、ふと何もかもが虚しくなる。自分は何の為に生まれてきたのだろう。母は何のために死んだのだろう。


自分はこれだけがんばっているのに、あの人たちは感謝するどころか要求ばかり。奴隷としか考えていないのか。


息詰まる現実を認識した瞬間――発作的に外へ飛び出した。


そして、どこをどう走ったのか。


途中で子ども達のはしゃぐ声が聞こえ、吸い寄せられるように立ち寄ったのがおはる屋だった。