契約結婚の終わらせかた






「やだ、寝ちゃった!?」


ガバッと起き上がると、時計は午前4時半を指してる。伊織さんの額に載せたアイスノンはすっかりぬるくなってた。


「水で冷やそ……」


一応ユニットバスはついてるから、風呂桶にお水を張ってタオルを濡らす。


ぴたりとタオルを額に置くと、伊織さんの目がぱっちり開いてびっくりした。


「気がつきました? 気分はどうです」

「……悪くない」


起き出した伊織さんは上半身を起こすと、いつものようにひと言。

「プリン」

「あ、は……はい」


クーラーボックスから部屋の冷蔵庫に入れたプリンを、スプーンと一緒に渡す。黙々と食べる伊織さんは、ボソッと私に言う。


「もう見てなくていい。体なら平気だ」

「で、でも……伊織さんが心配なんです。朝までみさせてください」

「いいから!」


珍しく、彼がその空気の時に声を荒げた。


「いいから、寝ろ。昨夜もろくに寝てないくせに、無理をするな」

「……」


知ってたの?伊織さんは……私が眠れなかったことを。

意外な彼の言葉は続く。


「おまえが倒れた方が……俺は」


伊織さんのスプーンを持つ手が止まり、ギュッと握りしめられた。


「……いや、何でもない。もう寝ろ。でなきゃ俺も寝ない」

「わかりました」


伊織さんの言葉の続きは気になるけど、きっと大したことじゃない。春になれば別れて二度と会わない相手に、引き留めるようなことなんて言うはずないもんね。


ちょっと悲しくなったけど、伊織さんの体調がよくなったならいいじゃないって。自分に言い聞かせて目を閉じた。


夢のなかで……身体がふわりと暖かな何かに包まれた気がした。