薬を……食事に混ぜられた?
体が弱った?
その話は、伊織さんがパーティーで葵和子さんを責めた時の言葉と一致する。
“あの女は……何一つ親らしいことをしなかった! 生みっぱなしで全てを家政婦任せ……そのせいで俺が死にかけたとしても、気にも留めず茶会だのなんだのと出かけ笑いさざめいてた! そんな女なんだよ!!”
“俺が……どんなに苦しくて呼んでも……あの女は……一度たりと応えはしなかったんだ!!”
もしかしたら……
伊織さんは体調不良のせいで、その時と記憶が混乱しているのかもしれない。だから、私を葵和子さんと勘違いして。
「僕は、最初からいらなかったんだろう! なら、なんで産んだんだ!! これだけ苦しめるために産んだのかよ! もうたくさんだ……僕には誰もいない。僕がいなくたって……誰も悲しまない。誰も困らないんだ!!」
「違う!」
思わず、私は伊織さんに詰め寄って否定した。どうかわかって、という思いで手を取ろうとしたけど弾かれる。
なら、と思い切って――彼をそっと抱きしめた。
「違う……伊織さん、あなたには私がいます。
約束しましたよね……家族になりましょう、って」
「家族……?」
「ええ、家族です」
完全に敵意が消えたとは言い難いけど、伊織さんから困惑を感じるようになった。たぶん、現実と混じった記憶が混乱を招いてる。
だから、私は彼を現実に引き戻すために魔法の言葉を口にした。
「だって……私は……―――……」



