「長い間お湯に浸かって逆上せてしまったんでしょう。水分を摂らせて体を冷やしてあげてください」
旅館の人は慣れたものなのか、冷やしたアイスノンやスポーツドリンクを一緒に持ってきてくれた。
「なにかあったらまたご連絡ください。夜間でもやってる医療機関も紹介しますから」
「はい。いろいろとありがとうございます」
部屋を出ていく彼らを頭を下げながら見送ると、ふうと息を吐いて襖を閉めた。
なるべく足音を立てないように歩くと、伊織さんが寝てる布団の傍らに座った。
熱を見るために額に触れようと手を伸ばせば、「触るな」と伊織さんの不機嫌な声が聞こえる。体調が悪くて機嫌も悪くなってるのかな?
「ごめんなさい……気分はどうですか?」
「…………」
伊織さんは私の問いかけに答えず、プイッとそっぽを向く。まるっきり拗ねた子どもみたいで、苦笑いをしてしまう。
「もう少し、水分を取った方がいいですよ。コップに移しましょうか?」
「いい」
きっぱりと拒まれて、いよいよ本格的に機嫌を損ねたと知る。
急にどうしたんだろう? と訝しく思うけど、顔が赤いから熱があるのは明白で。熱を冷ますために首に巻いたアイスノンを取ろうとした瞬間、パシンと手を叩かれる。
そして、伊織さんは叫んだ。
「……行けよ。俺なんかに構わず、自分がしたいことをすればいいだろ! いつものように」



