契約結婚の終わらせかた




結論。露天風呂はいいお湯過ぎてうたた寝してしまい、起きたら夕方5時55分。6時からの夕食に間に合わせるため慌てて、かき氷と卓球は後回しになりました。


部屋食は海の幸と山の幸が盛りだくさん。お刺身は舟盛りだし、海老や蟹やアワビ……見ただけでお腹いっぱいだけど、実際に食べなきゃ満たされません。


「伊織さんはどれが食べられそうですか? 雑炊でも作りましょうか」


ご飯を雑炊にできるセットまで揃ってるのは特別。伊織さんは食べられるものが少ないから、柔らかく煮たものならちょっとは食べられるかなと考えて。


「そうだな」


伊織さんはせっかくの機会だから、雑炊で試す気になったらしい。これまた前進だ、といそいそ雑炊を炊くために準備する。


その間に伊織さんはミクに自分の刺身を分けて、自分は茶碗蒸しを口にする。だし汁が平気になったなら、雑炊も食べられる可能性が高いな。


伊織さんが美味しく感じるように、と願いを込めて雑炊を煮る。片手間にお料理をゆっくり味わいながら、こんな幸せがいつまでも続くといいのにな。なんて思って、ちょっとだけ切なくなる。


(一度だけでもこんないい思い出を作れるんだから、わがままになっちゃ駄目だ)


ぽろり、と一粒だけ流れた涙を見られないためにゴシゴシと顔中を擦る。


「はい、できました。熱いから気をつけてくださいね」

「ああ」


小皿によそった雑炊には、新鮮な魚とキノコと野菜が入ってる。ドキドキしながら見守ってると……パクリと口にした伊織さんがひと言。


「……うまい、な」

(やった!)


初めて伊織さんに美味しいと言わせることができた。心の中で叫びながら、気付けば実際にガッツポーズを取ってた。


伊織さんの冷たい視線がイタイです……。