契約結婚の終わらせかた




紅葉狩りを満喫した私たちは今日泊まる宿に向かった。

ペットOKな宿は多いけど、獣医師が常駐しペット用品を揃えたお店まで併設したところは珍しい。


その分宿泊代は割高になるけど、ペット専用の温泉や運動施設等も充実してるから納得。


部屋に向かう途中でカメを連れたりした人とすれ違ったから、別に遠慮しなくていいかと安心できた。


泊まるのは旅館の和室。一階で高台に建てられているだけあり、絶景を眺めながら温泉を楽しめる。


ファミリータイプの部屋を予約したから、小さな家族風呂とペット専用温泉まで庭についてた。


「夕食まで、どうします?」


夕食は6時からの部屋食を希望しておいたから、まだ一時間はある。ぽっかり空いた時間をどう過ごすか訊いたら、伊織さんは「せっかくだから一風呂浴びる」とのこと。

「それじゃあこれを使ってください」


事前に用意しておいた入浴セットを渡すと、「なんだこれは?」と本気で言われた。

「入浴セットです。浴衣の貸出しはあるみたいですけど、タオルまでは用意してないみたいですから」

「だから、荷物が多かったのか。そんなかさばるものは買えばいいんじゃないか」


出た! 伊織さんのセレブ発言。むうっときた私は、彼をこんこんと諭す。


「そんなもったいないことしちゃダメです。準備できるものはきちんと自分で用意しておく。旅行のコツですよ」

「そんなものか? 俺は宿泊先ではカード以外ほとんど手ぶらだが」

「そんなもったいないこと、今後一切禁止です!」


伊織さんのクレジットカードの請求書……今度チェックしなきゃ! と気合いを入れた。