「鮎弁当買ってきました! ここでいただきましょう」
幸い空いたベンチを見つけることが出来たから、定食屋さんて並んで買ったお弁当をそこで広げる。
天然の鮎の塩焼きがメインで、山菜おこわと栗の甘露煮にキクイモの漬物なんかがついてる。
「……これはなんだ?」
「キクイモの漬物ですか? シャリシャリしておいしいですよ」
見た目はべったら漬けに似てるけれど、キクイモ自体が歯ごたえがあるんだよね。私がそう説明しながら食べて見せると、伊織さんは数度迷ってから箸をつける。
パクリ、と口に入れた彼はゆっくりと噛んで……ゴクリと飲み込んだ。
「……悪くない」
ほっ、と息を吐く。今まで漬物類は受け付けなかったから、これでひとつ彼が食べられるものが増えた。
「そうですか。なら、私の分をあげますね」
「なら、これをやる」
栗の甘露煮を丸ごとくれたけれど、やっぱりまだホクホクしたものは不得手みたいだ。
「おまえにはこれな」
伊織さんはキャリーバッグから出てきたミクに、鮎を解しながらあげる。本当はこんな塩辛いのはダメだけど、今日は特別。
だって、最初で最後の家族旅行だから。
「花子と太郎にもやるぞ」
伊織さんはベンチ横に置いた水槽に、家から持ってきたエサをまいてあげてる。
穏やかな陽射しの中で、美味しいご飯を満喫しました。



