契約結婚の終わらせかた





紅葉を見に来たことはあるみたいだけど、小さすぎてあまり記憶にない。


だから、今回の紅葉狩りは新鮮な気持ちで楽しめる。


「すごい……燃えるみたいに赤いですね」

「まあ、そうだな……花子の方が綺麗な赤だが」

「……」


金魚基準で考える伊織さんも大概ですがね。


それにしても、晩秋独特なひんやりした空気が気持ちいい。適度な風が吹いて紅葉を散らし、川面に浮かんだ葉っぱが煌めく水面を鮮やかに彩る。


地面に敷き詰められた天然の紅葉の絨毯も、踏むたびにカサカサ音が鳴った。


「伊織さん! せっかくですから写真撮りませんか?」


普段はあまり使わないスマホを取り出し、断られることを承知で提案してみた。ドキドキと返事を待っていると。


「太郎と花子と一緒なら」なんて予想通りの答えが返ってきて。苦笑いしながらも近くに通り掛かる人に撮影を頼んだ。


「私がミクを抱えてますから、伊織さんは太郎と花子をお願いします」

「ああ」


スマホを渡した人は変な人たちと思ったんだろうな。思いっきり怪訝そうな目をしてたから。


そりゃそうだ。紅葉狩りに犬はよく見るけど、猫を連れてる上に金魚まで同行させてるなんて。私でも珍妙な一団としか思えない。


でも、きちんと撮影してくれて感謝。


「ちょっ、ミク……暴れないで。いたっ」

「はい、いきますよ~」


カシャッ、と撮られた一枚の家族写真。


それは、私の大切な宝物になった。