契約結婚の終わらせかた




「わ、綺麗……!」


伊織さんの運転する車でやって来たのは、地元だけでなく全国的に有名な紅葉スポット。川沿いに広がる紅葉と、青空と煌めく川面の対比が美しい。


さすがに朝早めに出ても駐車場はいっぱいで、空いてる場所を求め右往左往。「駐車場500円」なんてプラカードを持って立つ人も目立つ。近いほど高い相場みたいだ。


支払いの時に伊織さんが万札を出そうとしたから、私が慌てて500円玉で払う。伊織さんは基本的に小銭を使わない……その経済観念のなさが恐ろしすぎです。


(離婚までに私がしっかり叩き込んでおかないと)


あの腹黒秘書の葛西さんには伊織さんをクビにする権限がある。葛西さんは使えないと判断したら、伊織さんですらすっぱりと切るだろう。その時今と同じ感覚でお金を使ってたら、あっという間に自己破産コースだ。


よし、と私はひとつの使命を胸に抱いて伊織さんを振り返る。


「伊織さん、いきましょ! ……重」


ドアを開いて車から軽やかに飛び出るはずが……


ミクの入ったキャリーバッグが……手にずしりと重い。


総重量推定7kgじゃ無理ですわね。


「ああ」


伊織さんは太郎と花子が入ったプラスチックの水槽を持ち、運転席から降りる。


金魚が助手席なのはね……うん、まあ。想定の範囲内です。

人間としてはいろいろな意味で複雑ですけれど。