契約結婚の終わらせかた




伊織さんが言うほどひどいのか……と見下ろして。 再び、ムンクと化した。


シワだらけ。泥や草や葉っぱにまみれて、擦った部分まである。


「きゃああああ! ど、どうしよう……お借りしただけなのに……うぅ……私のバカバカ!」


頭を抱えながら身悶えていると、フゥと伊織さんが呆れたため息をつく。


「ごめんなさい……騒がしくて……せっかくの着物なのに台無しに」

「……別に、俺の責任でもある」


伊織さんは膝を立てて石畳の縁に座り込んだ。


「その着物、俺があの女から買い取る。それでいいだろう」

「そ……そんなの! ダメです。わ、私が無茶をしたから汚したんですし。それに……」


葵和子さんにとってとても大切な思い出の品なんで、お金には替えられないんです。


そう言いたかったけど、まだ話していいのかわからなくて口を閉じた。


「あんたが弁償するのはいいが……その色無地はおそらく50万はくだらないぞ。それでも直ぐに払えるのか?」

「ご、ごじゅうまん……!?」

月に10万の収入もない今からすれば、目が飛び出すかと思うくらいの高価さだった。だらだらと汗を流す私に、伊織さんはフゥと息を吐く。ごめんなさい……ため息をつかせてばかりで。


「弁償はしてやるが、借金に加えておくからな」

「ですよね……」


夫婦とはいえ他人なのだから、きっちりケジメは着けるべきだ。肩を落とした私に、伊織さんはこう言った。


「その代わり、おまえの希望をひとつだけ聞いてやる」