「あっ……」
伊織さんを見ていて、気づいたことがある。
笑顔がだんだんと強張り、心なしか顔色が悪くなってきてるって。
(まさか……)
私はチラリと自分が持つちりめん織りのバッグを見る。その中に念のためと入れてきたものがあった。
(まさか、役に立つ時が来てしまうなんて……)
伊織さんはまだにこやかに応対をしていたけれど、だんだんと笑顔が張り付いた人形のように見えてきた。 時折、指先が顎の辺りを叩いてる。
……間違いない。
あの癖が出るということは、気分が悪い。つまり伊織さんは今、体調が悪くなってきてるということ。
(大変だ。早く薬を飲ませないと!)
最近の伊織さんは指示通りに薬を飲んでない。どうして知っているのかと言えば、調剤薬局の袋に入った薬が丸ごと捨てられてたから。
見つけるたびに自分の部屋で保管してたけど。まさか、本当に服薬を止めてたなんて。
ハラハラしながら見守っていると、伊織さんが美女軍団から抜け出したのが見えた。
「伊織さん!」
私は彼の後を追おうとして王子様の手を振りほどくと、ペコッと頭を下げた。
「助けていただきありがとうございました。大切な用事が出来ましたので、これで失礼しますね」
そして伊織さんを追いかけた私は、そのまま会場を抜けて外のガーデニングへ足を踏み入れた。



