「キミ、和泉 伊織の妻だろう?」
その指摘に驚いて振り向けば、王子様はにっこりと笑う。そして彼が視線で促した先にいたのは……
あずささんに負けないレベルの美女に囲まれる伊織さんの姿だった。
しかも……伊織さんは……微笑んでた。
(……やっぱり私には笑顔を見せてくれないんだなあ)
現実を認めた瞬間、胸がズキッと痛む。耐えられなくて目を逸らそうとしたら、王子様はスッと視線を遮ってくれた。
「キミは、あんな男でもいいのかい? 妻以外の女にうつつをぬかすような不誠実な男に」
「………」
王子様は伊織さんを非難するけれど、それはまったく見当違いもいいところ。
もしも愛を誓いあった永遠の契約である婚姻なら、相手の心変わりや浮気を責められるだろうけど。
伊織さんが何人の女性と付き合おうが、契約上だけの妻である私に責める資格なんてこれっぽっちもないんだ。
だけど、でも。
(伊織さんは……大丈夫)
私からすれば確信に近いけど、彼がわざわざコソコソと浮気するとは思えなかった。
それは、この半年間一緒に暮らしてきたからこそ言えること。
もしも他に愛する人ができたら、伊織さんはきちんと話してくれるはずだ。普段は無関心で冷たく感じる彼だけど、感情表現が不得手なだけで。本当は誰よりも喜怒哀楽が激しい人なんだ――。
夏祭りの拗ねた顔や、海で寝入った顔。射的でぬいぐるみをくれた時のちょっと照れくさそうな顔。
「伊織さんは、決して不誠実じゃありません!」
王子様をキッと睨み付けると、彼の拘束が弱まった。



