契約結婚の終わらせかた






その日から、伊織さんは全く私の前に姿を見せなくなった。

もともと彼は朝が早く夜も遅いから、私がいつもの生活をしようとしたらすれ違ってしまう。今まで意識的に彼に合わせて早起きしたり、起きたりしてたけど。それも嫌なのか泊まりの出張が増えてく。


徹底的に避けられた上に、稀に顔を合わせてもすぐにどこかへ行ってしまう。毎朝作るサンドイッチも、プリンも、パンプディングも。食べる人がいなくていつもおはる屋に持っていくはめになってた。


もちろん、私は話す努力はした。まず謝罪をしてから、彼の怒りと罰を受ける覚悟があると伝えようとしたけど。 話せる時間がない上に、手紙を置いたり挟んでもいつも破かれ捨てられてる。


……今日で半月。


おはる屋からの帰り道、はぁっと川辺でため息を着いた。


「バイト……行かなきゃ」


10日ほど前から、「あくあくりすたる」で店番のバイトを始めた。おはる屋から寄って午後8時の閉店まで。


なぜかと言えば美帆さんがとある事情でお店を空けるからで。私がバイトを捜してると話した瞬間、じゃあお願い! とがっちりと肩を掴まれた。


時給800円とあまり高くないけど、収入が増えるのはありがたい。と1も2もなく引き受けた。


……伊織さんに相談したくても、とてもできる雰囲気じゃなかったから、私の独断になるけど。いくら話そうと努力したところで、伊織さんは一方的に私を避けるだけ。聞く機会すらない。


(いいよね、別に……伊織さんは私のことなんてどうでもいいんだから)


やさぐれた気持ちになって、レジの前でため息を着いた。