(あ、そういえば昨日の夜作ったプリンが余ってたっけ)
今朝は伊織さんがサンドイッチを食べたから、プリンはいつもより少ない個数で済んだ。伊織さんのお母さんなら甘いものは大丈夫かな? と思う。
飲み物にこだわりはあるけれど、和菓子や洋菓子は区別なく楽しむ気がした。
「あの、なにかお召し上がりになりますか? プリンならご用意できますが」
「プリン?」
「はい。もし苦手でなかったら、ですが」
私がそう問いかけた次の瞬間、どうしてか葵和子さんの口がキュッと引き結ばれた。
「ええ……お願いします」
「それじゃあコーヒーにしておきますかね」
「すみません、鈴木さん」
葵和子さんがプリンを召し上がるならコーヒーがいいだろう、とハウスキーパーの鈴木さんが気遣ってコーヒーを淹れるために、カプセルタイプのコーヒーメーカーをセットする。 葵和子さんのモカという希望に合わせ、苦みがある独特な香りがダイニングに広がった。
(そういえば、どうして葵和子さんは私に話しかけてきたんだろう? 伊織さんが結婚したと聞いても驚かなかったし)
せっかくだから、とプリンをお洒落なカットグラスに入れ直し、ミントの葉や生クリームや果物で飾る。
トレイに載せて運んだものを葵和子さんの前に置くと、彼女は木のスプーンを手にプリンにジッと見入ってた。
「いただきます」
綺麗な挨拶をした葵和子さんは、ゆっくりとスプーンでプリンを掬って口に運ぶ。
ひとくちプリンを口にした葵和子さんは、驚いたように目を見開いた。



