契約結婚の終わらせかた






午後はスイカ割りゲームをしたり、ビーチボールで簡単なゲームをしたりと、なかなか楽しめた。


夕方近くになって人が減ると、思い出のためにみんなで貝殻拾いをする。


きっと、私はこの夏の出来事はずっと忘れないだろうな。


来年の春に契約が切れて伊織さんと永遠に別れるとしても。彼との思い出は、そっと胸の奥にしまっておける。


伊織さんがもっと人間らしくなって、他に魅力的なひと……たとえばあずささん……と本当の結婚をしても。


それまでは、私は精一杯彼の妻としての役割を果たそう。たとえ偽物の妻であっても、出来ることはあるから。





「さあ、男どもは出た出た!」


夕方。おばあちゃんとくるみさんの手で、女性陣は浴衣を着付けてもらった。おばあちゃんの知り合いの海の家を貸してもらい、手慣れた様子で着付けをするくるみさんは凄い。彼女自身も完璧なスタイルの着こなしをしてる。


さすがにあの葛西さんが溺愛するだけあって、見た目だけじゃないんだなって感心する。


「私も着物の着付けを覚えたいんですけど」


おばあちゃんは私が不器用だから、と一切教えてくれなかったから。くるみさんにこっそり打ち明ければ、彼女はあらあらと微笑む。


「わたしで良ければお教えしますよ。一応師範の免許はありますから~」

「ほ、ホントですか?」

「はい~他ならぬ伊織さんの奥さんの頼みですからね」


伊織さんの妻という条件なのは仕方ないけど。これでちょっとだけ教養がつけられる! と嬉しかった。伊織さんの妻として恥ずかしくないように、必要最低限のことは覚えたかった。