契約結婚の終わらせかた




おばあちゃんは朝炊いたご飯の残りをおにぎりにしておいてくれたから、それとお茶で簡単な昼食を取り、すぐに定位置に腰を下ろす。


彼の容体は気になるけど、すりガラスの戸を開くと外からも部屋が見えてしまう。だから、後ろ髪をひかれる思いで戸を閉めておいた。


おはる商店は原則朝9時から夜7時までの営業。お昼から夕方5時まで私が店番する以外はおばあちゃんが見てる。


とはいえ、主な客層は子ども。幼稚園児や小学生、せいぜい中学生。たまに高校生が寄るくらい。

駄菓子や雑貨にチープな玩具と雑誌、それと文房具って。大人があまり必要としないものばかりだから、どうしても子どもが商売相手になるんだよね。


最近は近くにコンビニができたりと競争相手が多くなってきたから、売り上げは私の子ども時代より落ちてる。


そりゃあ、コンビニの方がいろんな商品もあるし。魅力的なんだろうけど。


私は……この木と人のぬくもりを感じられる、この場所が大好き。


本当の家族がいない私に、ひとの温かさを教えてくれたから。


「碧姉ちゃん、久しぶり!」


物思いに耽っていると、入り口からヒョコッと顔を出した男の子に驚いた。


「あれ、空くんじゃない! 久しぶりだね。高校は?」

「いやぁ、新入生歓迎会の準備があったけどフケてきた!」


ははっ、と悪びれもせず笑う男の子も、この駄菓子屋のもと常連さん。昔馴染みの顔を見られて、自然と心が浮き立った。