だけど、困ったなというのが正直なところ。
朝の9時に遅めのご飯をとった後、彼に付き添いながら事務仕事をしていたんだけど。全然熱が下がる気配がない。
駄菓子屋はお店を開けたばあちゃんがそのまま店番をしてる。お昼から5時までの店番は私の役割。だから、もう12時になる今から夕方まではずっと付きっきりで彼を看られない。
「おばあちゃん、斎藤さんの往診頼んで良いかな?」
馴染みの診療所の名前を出すと、レジの前で新聞を読んでたおばあちゃんは老眼鏡を直しながら口を開いた。
「そんな金はないよ。だいたい、あんたが昨日タクシーなんざ使うからね」
それを言われては元も子もなくて、グッと言葉を飲み込むしかない。
そりゃあ、私もこの駄菓子屋の経営状況が芳しくないのは知ってる。なにせ、帳簿や伝票を管理してるのは私なんだから。子ども相手の薄利多売で、経済的に決して恵まれた方でないと。
「大丈夫さ。あれくらいの熱なら、布団を被って汗をかきゃいつか下がる。人間は頑丈にできてるもんだ。心配など要らん」
黙った私におばあちゃんはそう言うと、それよりと腰を叩きながら立ち上がる。
「わしは買い付けに行ってくるからちゃんと店番するんだよ」



