「か、返してよっ」
少しどもりながら、彼の腕に通された紺色のシュシュに手を伸ばす。
でも緊張しているのか、それとも単に臆病なだけなのか…
もう少し、という所であたしはその手を引っ込めた。
「返して欲しいんじゃないの?」
クスッと笑い、あたしを見下ろす。
悪魔のような笑みは彼によくお似合いで、腹ただしい程カッコいい。
でも誰だって、悪魔なんて言われたら黙っていないよね。
だからあえて心の中で留(トド)めることにしたのだけれど…
「今、俺のこと悪魔だとか思った?」
なんて、見透かされてしまう。
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