二百文字小説【小さな玉手箱】

《86.異世界の勇者》

 俺が召喚された世界は、魔王の猛威で崩壊寸前らしい。

 背中に勇者の剣を持ち、王に謁見する。

「よくきてくれた。勇者よ」

 王の言葉とともに周囲から拍手が沸き起こる。

 この人たちの恐怖を払うために俺はきたのだ。

「ご飯よ。はやくすませて」

 ところが現実に引き戻す母の声。俺が現実を忘れられる空間はここにあるのに。

 悩みの逃げ場は何処だっていいじゃないか。

 食事後はまた勇者だ。異世界を救う勇者は、現在、就職活動から脱出中。