二百文字小説【小さな玉手箱】

《84.歯医者》

 息子の奥歯に虫歯ができた。ちゃんと歯磨きしなさいって言ったのに。

 診察室に入り、先生に診てもらうと意外なことを言われた。

「これは乳歯なので抜いてしまいましょうか」

「歯を抜くってなくなるの? 僕ちゃんと歯磨きするから許して」

 怯えたような息子の顔。

「生えてくるから大丈夫だよ」

 けれど、先生の説明で安心した顔をした。

「お母さんも虫歯あるんだよ」

 そして、言わなくてもいいことを。許して。お母さんのは抜けないのよ。