彼女はこの高校に来て初めて恋を知り、見事成就させた。

だけど、初めてだらけの恋愛に手こずっているようで、最近は喧嘩が絶えないらしい。


「ね、先生の初恋ってどんな感じだった?」


問われて、私はここで私の頭を撫でてくれた人のことを思い出す。


「切なくて、苦しくて……だけど、温かかったな」


声が知らずに優しくなって。

私は、彼女の傍らに立つと、綺麗なセミロングの頭を撫でた。


「あなたもできるといいね、幸せな気持ちもくれる大切な人が」


今の彼であっても、他の人であっても。

忘れられない、忘れたくない大切な人が。


彼女は「幸せな気持ちかー」と頬杖をつきながら声を漏らす。

そして、怒りがおさまってきたのか、彼氏と話し合ってみると言って準備室を出て行った。