呼吸に合わせ上下する胸。

鼻をくすぐるさわやかな石鹸の香り。

今までにない程の至近距離で見る椎名先生に、心臓がバクバクと騒いで仕方ない。

とりあえず、フリーズしてしまいそうな思考を必死に動かして状況を整理してみる。

私の方を向き、静かな寝息をたてる椎名先生。

狸寝入りには見えないし、そもそも先生が意図的に私の隣に寝るなんてまずないだろう。

と、いうことは。

トイレに行き、寝ぼけて私がいるのを忘れ、いつものようにベッドに戻った……のだろう。

私も壁の方に寄り気味だったし、部屋暗いし、見えなかったのも原因かもしれない。

うん、ようやく理解が追いついた。


……で、ここからどうする、だよね。

起こして間違えてることを知らせるか、そのまま寝かせて私がソファーで寝るか。

起こしたら、先生はビックリして謝るんだろう。

真面目な人だから、気にしてしまうかもしれない。

じゃあ、私がソファーに寝る……のも、よく考えてみれば、先生がベッドの上で目覚めるのは、起こしたパターンと同じになることに気づいた。

要は、起きる時間が早いか遅いかの違いなのだ。

それなら……ちょっとだけ、この状況のままでいさせてもらおう。

ドキドキしながら、ジッと先生の寝息に耳を傾ける。