「優奈?」
起き上がって、まだそっぽを向いたままの優奈の顔を覗き込む。
「こっち向けって」
優奈の頬に手を当てて俺の方を無理矢理向かせると、優奈はその手を払い除けた。
「私が嫌いなら追い掛けて来ないで」
「……優奈?」
「どうして追い掛けてくるの?どうしてこういう時だけ優しくするの?拓真のこと、わかんないよ」
止まらない涙を手で何度も拭って、優奈は声を荒げる。
悲しそうな声に、心臓がギュッと苦しくなった。
「そんなの…お前が泣いてるからに決まってんだろ。放っとけないんだよ」
泣いてる優奈を助けるのは俺の役目だ。
五年前、そう心に決めたのに。
「何で泣くんだよ……あんなの、いつもの言い合いだろ」
俺は泣かせることしか出来ねぇんだな……
「もうヤダ。私は拓真とこんな言い合いしたいわけじゃないのに……」
ひっく、と嗚咽を漏らす優奈の手をそっと握る。
俺だって同じだ。
こんな風に喧嘩して、優奈を傷付けたいわけじゃない。
だけど、素直になれないんだよ。
優奈があまりにも可愛くて、苛めたくなるんだ。

