え、何だよ……何泣いてんの……?
いつもだったらそこは、『言われなくても帰るわよ!バーカ!』とか『あんたが帰ればいいでしょ!』とか、反論してくるところなのに。
いつもとは違う反応に、俺は何も返せなかった。
走り去る優奈。立ち尽くす俺。
頭に浮かぶ、優奈の泣き顔。
久しぶりに見た優奈の涙。
無意識だった。
俺は走り出していた。
優奈の背中を追い掛けて。
陸上部で短距離を得意とする優奈。
いくら陸上部だからといって、俺や海生より速くはないのに。
優奈の姿はあっという間に視界から消えた。
「くそ!逃げ足は速いな」
だけど俺は走り続ける。
優奈のいる場所は多分あそこだ。確信があった。
二、三分走ると、俺は足を止めた。
閉まってる小学校の裏門を軽々と登る。
そこからすぐの所にある体育館の裏に立つ大きな木の下に優奈の姿はあった。
「やっぱり。ここにいた」
俺と優奈の秘密の場所。
海生も知らない。俺らだけの場所だ。
「ぐす、何で追い掛けてきたの」
涙を拭いながら、優奈はそっぽを向く。
「優奈が逃げるからだろ」
俺は優奈の隣りの芝生に腰を下ろすと、ゴロンと寝転がった。
「変わってねぇーな。ここ」
青々とした芝生。木漏れ日。静けさ。
全て、当時のままだ。
「あれからもう五年か」

