「あいつにもう少し可愛げがあればな」
「何だそれ。お前ら付き合ってんだろ?」
俺と優奈は中学の頃から付き合ってる。
だけど、俺らがしょっちゅう言い合ってるのは、付き合う前から変わってない。
付き合い始めた時は、お互い恥ずかしくて喧嘩も減ったけど。今ではそんな初々しさなんて、これっぽっちの欠片も残ってるわけがなく。
あの時、好きだとかそういう確かな言葉はなかったけど、俺達の気持ちは同じだったはずなのに。
◇◆◇
それは中二の夏に遡る。
「あっぢー!こんな暑い中勉強なんて出来ねぇよ」
外からミンミン蝉やツクツクボウシなど色んな蝉の鳴き声が聞こえる。
まるで合唱を繰り返してるようなその鳴き声が一段と暑さを倍増させて、俺は完全にヤル気を失せていた。
「窓閉めても蝉はうるせぇし。なぁ海生、勉強やめてゲームしようぜ」
「こら拓真!海生を巻き込まないの!ゲームしたいなら一人ですればいいじゃん」
海生の部屋に集まって三人で大量の夏休みの宿題をやっつけていると、いつものように初めに俺の集中力が切れた。
そんな俺に、これまたいつものように優奈が喧嘩を吹っかける。
ギャアギャアと言い合いが始まると、海生が机にバンッとペンを置いて、「お前ら煩い」と俺らを家の外に追い出した。

