ドキッと跳ねた心臓を抑えて、「あり得ない、絶対に」と自分に言い聞かせているとフェンスがカシャンと鳴った。
「たっくま!今週の土曜日、部活終わったら遊びに行かない?」
振り返ると、女子テニス部部長の近衛春香(コノエ ハルカ)がフェンス越しに声を掛けてきた。
ちなみに今は夕練の休憩中で、海生とテニスコートの周りを囲うフェンスに寄り掛かって座っている。
「もしかして、また?」
「そうなのぉ!話聞いてよー!」
泣き真似をしながら言うこいつ、近衛とは一年の時に同じクラスだった。
席はくじ引きなのに、二回に一回の確率で隣り。
部活も同じ。委員会も同じ。
近衛も俺も人見知りはせずによく喋るタイプだから、仲良くなるのに時間は掛からなかった。
俺らの間にやましいことは何一つない。
近衛には好きな人がいる。
近衛が俺を遊びに誘うのは俺が適当に恋バナを聞いてやるからだ。
それ以上でもそれ以下でもない。

