「あー!もう!わかんねぇのは海生の方だろ」
拓真はヤキモキしたように髪をグシャグシャっと掻く。
わかんねぇのは俺の方って、何だよ。
拓真に言われたくないっつーの。
「クソ海生が」とポツリ言いながら俺のとこまで来ると、拓真は「耳の穴かっぽじってよく聞けよ」と鋭い目で俺を見据えた。
「いいか?今日の部活には出るな。今日中に心身ともに体調万全にしてこい」
「心身ともにってーー、」
「お前はうちの一番手張ってる自覚あんのか?そんなんで全国挑まれちゃ迷惑なんだよ。もし明日もまだ引きずってたら校庭百周だかんな?」
拓真が俺の言葉を遮って、低い声で俺を威圧する。
珍しく真剣な拓真の表情に一瞬冷やりとして、「は…?」と擦れた声が出た。
「これは部長命令だかんな」
俺をビシッと指差して言うと、普段とは違う凛々しい拓真に圧倒されて立ち尽くしてる俺を置いて、拓真は颯爽と歩いて行った。

