『今日はどうしたんですか?』



春川さんはキョトンと曇りのない綺麗な瞳でジッと見つめてくる。



ゔ……な、何だこれ……


ヤバい。ヤバい……マジで。


心臓は煩い、異様なほど汗がダクダク出てくる。


顔もあり得ないぐらい熱い。


喉が渇いてるわけじゃないのに口内はカラカラに乾いている。


さっきまでは何ともなかったのに。


彼女と顔を合わせた途端、俺の身体に何が起こったんだよ……



『あの……?』



何も言わない俺に、春川さんは不思議そうに首を傾げる。



『あ……えっと……』



しっかりしろよ、俺。


ただ傘を返すだけじゃないか。


なんも緊張することなんかないのに。



『あの子の彼氏なのかな?』

『えー?マジ?残念』

『奪っちゃえばいいじゃん』



周りからそんな声が聞こえてハッとした。


そうだ、ここは公衆の面前だった。


とにかく場所を移そう。