首元で光る結婚指輪にそっと触れる。
なぁ、麻里香。
許してくれとは言わない。
あの事故からまだ数年。
俺は麻里香ではない他の女を好きになった。
墓前で“俺は麻里香だけを一生愛する”って誓ったのに、俺はその誓いを破ったんだから。
「…俺は幸せになる資格なんてないのかもしれないな」
ふっ、と自嘲気味に鼻で笑う。
春香は聞き取れなかったようで、「え?」と怪訝な顔をした。
「ねぇ、大ちゃん。それ…」
春香は俺の首元に目をやる。
麻里香と俺の、交換されることのなかった結婚指輪。
春香は目を細めて微笑みながらそれを見つめた。
「お姉ちゃんは幸せ者だね。大ちゃんに愛されて」
「春香…」
「私ね、お姉ちゃんが羨ましかったの。二人が付き合ってない時も、大ちゃんの視線の先にはいつもお姉ちゃんがいて。お姉ちゃんは大ちゃんの隣りでいつも笑ってて、妹の私から見ても凄く可愛く見えた。大切にされるって女の子にとってこんなにも幸せなことなんだって思った」
春香は窓から空を見上げた。
飛行機雲が空に線を描き、鳥が自由に羽ばたいている。

