「今、ICUにいるけど、お医者様の話によると大丈夫だそうよ。いずれ目を覚ますわ」
母さんは目の前のICUと書かれたドアを見つめる。
そうか。春香はここでおばさんの無事を祈ってたんだ。
「そういえば親父は?」
「……挨拶に行ってるわ」
母さんは言い辛そうに、視線を逸らした。
今日は結婚式だ。
遠方から来て下さった方も大勢いる。
「……俺も行かなきゃ」
「貴方は休んでなさい。他の手続きも心配しなくていい。ここはお父さんに任せて、ね?」
「でも」
「こういう時ぐらい、素直に甘えなさいよ」
涙ぐみながら言う母さんの優しさに、胸が温かくなる。
有り難かった。本当に。
親父に電話してくるという母さんに代わって、寝てる春香の頭を膝にゆっくりと乗せる。
「ごめんな」とポツリ呟きながら、そっと頭を撫でた。
その瞬間、ビクッと身体が強張ると、春香は勢いよく目を開けて飛び起きた。

