やめてくれ。冗談だと言ってくれっ…!
俺から春香まで奪わないでくれよ……!
院内を探し回る。
受付に聞けば何かわかるかもしれないのに、そんなこと思いつかないぐらい焦っていた。
その姿は二階の廊下の長椅子にあった。
「春香っ!」
すぐに駆け寄る。
春香は俺の母さんに肩を抱かれて眠っていた。
「良かった……春香…」
俺は春香の前で座り込み、安堵の息を吐いた。
本当に良かった……
春香までいなくなってしまったかと思った。
顔を覗くと、睫毛は濡れ、頬には涙の跡。
辛かっただろう。
たくさん泣いたんだろう……
本当は俺がもっと気にしてやらなきゃいけなかった。
おじさんと姉を亡くした事実は、まだ中学生の春香には重すぎる。
なのに、俺は自分のことばっかりで……最低だ。
「春香ちゃん、さっきやっと寝たのよ」
「そっか……おばさんは?」
警察からの電話で、おばさんは一命を取りとめたって聞いた。

