「さっさと帰ろう!」
気を遣ってか、楓がぐいぐいと体を押して急かしてくる。
ふたりにも、凛ちゃんと距離を置いてケジメをつけると話した。
時期が来たら、気持ちを伝えたいことも。
2組の前を通る。
凛ちゃんの視線を感じるけど、目を合わすことはしなかった。
「そうだ! テスト終わったら合コンしようよ!」
凛ちゃんの視線を意識していたあたしは、楓の言葉に理解がついていかない。
「なんて?」と聞き返したときには、とっくに廊下から階段に差し掛かっていた。
「合コン! っていっても、あたしの中学の男友達ね。 男子校だから出会いがないんだってさ」
「へえ〜! かえちゃんの人脈すごい」
テストが終わってパーッと遊ぶのはいいけど、あたし、出会いとかは……。
思わず言葉に詰まると、楓があわてたように声をかけてくる。
「日葵は無理しなくて大丈夫だからね!」
「ありがとう……」
なんだか気を遣わせてしまって、申し訳ないな。