着いた……。
誰もいない廊下、数学準備室の前で息を整える。
ノックをしようとした、そのときーー。
「いいですね、ここ。 隠れ家みたいで」
美浜先生の声が聞こえてきた。
なんで、美浜先生がここに……?
ノックしようとした手はだらりと落ちて、ぼうぜんとする。
「なにしに来たんだよ。 返事ならちゃんとしただろ」
面倒くさそうな凛ちゃんの声。
返事って、なんの……? わからないことだらけで、立ち尽くすしかない。
「あのラインの一言で済ませたつもりですか? 凛さんも冷たいなぁ」
「直接も、言ったよな。 ……百合とは付き合えないって」
ああ、やっぱり、ふたりはそういう仲にあったんだ。
美浜先生は凛ちゃんが好き。 凛ちゃんも百合と呼んでる。
今、ふたりが付き合ってないとしても特別な関係だということは、わかった。
あたしは、なんで数学準備室に来たんだっけ?
……そう、凛ちゃんと話すためだよ。
「あたし、凛さんのこと諦めたくない」



