「えっ? 凛ちゃんって?」
「ひまちゃん?」
あたしの席を囲むように前と右隣に座る楓と心音から、一斉に見つめられる。
え……あたし今、なんて……。
「おーい? 誰なの凛ちゃんって」
「え、いや……」
ふたりに凛ちゃんのことを話すのはまだ先と思っていたけど、意外なところでボロが出た。
机の上のお弁当を穴が開くほど見つめて黙り込むけど、ふたりは話題を変える気配もない。
「ひまちゃん無理しないで……。 話したいときに話してくれたらうれしいな!」
「えー! でも心音も気にならない?」
「そ、それはそうだけど〜……」
わざわざ楓と心音に秘密にする必要はないよね……。 せっかくだし話してしまおう。
「……り、凛ちゃんってね」
小さな声で口にした、好きな人の名前。
もっとボリュームを落として「九条先生なの」とささやいた。
すると、ふたりは目を丸くして顔を見合わせた。