5月、桜が散って木々が緑色になった頃、3年生の間ではあるウワサで持ちきりだった。


移動教室で廊下を歩いてるとき、楓がその話題を持ち出した。



「実習生が来る?」


「そうなの! 見た人が言うには、美形揃いなんだって!!」


「相変わらずかえちゃんの情報網はすごいな〜!」



感心する心音の隣で薄い反応を示すあたしに、楓がずいっと近づいた。


び、びっくりするなぁ!



「日葵ってば、ぜーんぜん美形に反応しないな〜?」


「そ、そうかな」


「わかった、身近にイケメンがいるんだ! そうでしょ?」



確かにいるけど、今それは関係ない……。


と、思いながらも頭にぽんっと凛ちゃんの顔が浮かぶ。



「えっ、ひまちゃん図星!?」



妙な鋭さを見せる心音に「違う違う」と必死で首を降る。


ふたりに凛ちゃんのこと話したいと思ってるけど、このタイミングではない。



「怪しいなぁ」


「怪しいねぇ」



ふたりにじろじろ見られながら、廊下を歩くことになった。