電話口のお母さんは、心配そうな声色をしている。
凛ちゃんのお家に泊めてもらうと、言おうとしたとき、電話を代わってほしいとささやかれた。
「えっと、凛ちゃんに代わるね」
戸惑いながらも、スマホを凛ちゃんに渡した。
なんでわざわざ凛ちゃんが言うんだろう……。 隣で聞いていても、いいのかな。
「大雨警報が出ていたの見ましたか? ……はい、そうですよね。 なので、日葵を今日泊めてもいいですか?」
お母さんがなんて言っているのか聞こえないけど、話はすんなりとまとまったらしい。
凛ちゃんは「責任をもって預かります。では、失礼します」と礼儀正しく電話を切って、あたしにスマホを返した。
「自分の家みたいに過ごしていいからな、ひま」
「ありがとう凛ちゃん。 お世話になります!」
凛ちゃんは優しいから、あたしを心配して泊めてくれる。
変に緊張する必要もない。 家族と過ごすようなもの。
そう言い聞かせて、凛ちゃんとふたりきりの夜が始まった。