「悪かったよ。 ひまだって高2の女の子だもんな」



あたしにクッションを手渡し、床に座ると柔らかな笑顔を浮かべる。


それを受け取ると、胸の前で抱きしめて、クッションに顔をうずめた。



昔っから、凛ちゃんの笑顔は苦手だ。


優しすぎて、胸がかゆくなっちゃう。


目を逸らしたいのに、笑顔は見ていたい、みたいな。


自分でもよくわからないんだけど。



ちらり、とクッションから顔を上げて凛ちゃんに声をかける。



「凛ちゃん、大学卒業したの?」


「おー、おかげさまでな」


「すごいね、凛ちゃん……。 昔から頭よかったもんね」


「ふっ、褒めてもなんも出ないよ」


「……そ、卒業おめでとう」



久しぶりに再会しても、相変わらず優しい笑顔の凛ちゃん。



初恋の人。


そして、今も大好きな人。



「ありがとな、ひま」



面と向かって「卒業おめでとう」と言うのは、やっぱり照れくさいな。


でも、凛ちゃんの笑顔は、ずっと見ていたくなる魔法がかかってるね。