きみ以上に、好きな人はいない






中から凛ちゃんの声がして、あたしはドアを押して数学準備室へ入った。


教室や職員室は引き戸だから、変な感じだ。



「失礼しまーす……」


「ひま、ちゃんと授業聞いてなかっただろ」


「な、なんでわかるの……?」


「吉川さんのプリントだけ提出されていないからです」



なんて、呼び方変えてきたけど、笑ってるし楽しそうな表情の凛ちゃん。



数学準備室はあたしの部屋と同じくらいの広さで、おそらく六畳。 窓は奥に1つある。


窓の近くに机とイスが置いてあって、あとは数学に関する本ばかり並んだ本棚が壁をうめている。


机とイスが1つずつしかないから、社長室みたいだ。 いや、社長室にしては狭いのかもしれないけど。



「ちゃんと提出しに来たよ。 凛ちゃん、職員室にいないからびっくりしたよ」



くるくる回るイスにどっしりと座ってくつろぐ凛ちゃんにプリントを渡す。


机の上にはコーヒーがある。 ブラックコーヒーだ。



こういうふたりきりな場所なら大丈夫かと思って、いつも通り話しちゃうな。