「みんなとは主に、数学の授業で関わらせてもらいます。 仲よくなりたいので、どんどん話しかけてください。 よろしくお願いします」
凛ちゃんの形のいい唇が放つ言葉を、ただ聞いている。
だって、頭がついていかない。
「ウワサ通りのかっこよさじゃん」
「てか予想以上だよ。 いくつだろ?」
「今年大学卒業したくらいでしょ。 23歳とか?」
「かっこいいねー! うちらのクラスの数学受け持ってくれるといいね!」
周りにいる女の子たちからは、そんな話し声が聞こえる。
女の子たちの年齢予想は合ってる。
凛ちゃんは早生まれだから、まだ22歳。 生徒の中でこんなこと考えてるのはあたしだけだよね。
なんて、少しの優越感。
凛ちゃんが赴任する高校の子たちうらやましいなって、思ったけど。
でもまさか、自分がその生徒になるなんて。
「思わないよ……」