そんな声が響いた途端、列の真ん中あたりに並ぶ楓の背筋がぴんっと伸びた。
そっか。 ウワサの先生がいるんだっけ。
先生たちがぞろぞろと壇上に上がる。
みんなじーっと見ている。
さっきまで俯いて聞いてなかった人も顔をあげていて、あたしも、釘付けだった。
……ほんとに、釘付けになった。
だって、あたしのよく知る人物が、そこにいたから。
「え……」
ウソだ。 一言も聞いてないよ。
絶対に、ウソ。
……でも違う。 ほんと。
ウワサの先生が予想以上にかっこよかったのか、始業式にも関わらずざわついている。
他の先生が淡々と紹介され、あいさつしていく。
そして、彼の順番がやってきた。
あたしは息をのんだ。
反対に、色めきたつ女の子たち。
「九条凛です。 よろしくお願いします」
幼なじみの凛ちゃんが、あたしの通う学校に、「先生」として、やってきた。