1台の車に乗っているふたりの男女、運転席には凛ちゃん、助手席にはあたし。
凛ちゃんがあたしの頭を撫でている写真だった。
「やば、ふたり付き合ってたの?」
「教師と生徒ってやばくね? 漫画みてー」
「ちょっとショック、九条先生が生徒に手を出すような人なんて」
「九条先生どうなるんだろうね……」
面白がる男の子たち、冷たい視線を送ってくる女の子、好き勝手に想像するクラスメート。
色々な言葉が耳に入ってはいるのに、頭は真っ白で。
「日葵、大丈夫……?」
「ほんと、誰がこんなこと……」
楓と心音が心配そうに声を掛けてくるけど、それさえも跳ね除けて教室を飛び出していた。
向かった先はーー。
「凛ちゃん!」
「おはよ、ひま。 どうした? そんな慌てて」
数学準備室にノックもせずに勢いよく入ったら、いつものように凛ちゃんがゆったりコーヒーなんか飲んでて拍子抜けした。
目をぱちくりさせるあたしに、凛ちゃんは目を細めて笑う。
「あのね、凛ちゃん……!」