「そうだ、いいこと思いついた」
「ん? なーに?」
名残惜しいけど、そろそろ電話を切ろうかな、と思っていたら、凛ちゃんが声を上げた。
どうしたんだろう?
「旅行いこうか。 1泊2日で」
「…………」
「おーい? ひま?」
「そ、それは、こ、ここ心の準備ができてないから……!」
「心の準備? なんの?」
電話越しでもわかる。 きっと凛ちゃんはイジワルな顔で笑ってるにちがいない。
旅行って……いきなり過ぎるでしょ!
「考えといて。 近々日菜子さんにもあいさつにいくから。 あ、ごめん。 職員会議あるから切るな」
ーーピッ。
最後はほぼ一方的に告げられ、電話も切られてしまった。
お母さんにあいさつしに来るって……?!
ていうか、旅行……!
確かに、もっと堂々と会いたいとは言っちゃったけども。 凛さんよ、いろいろすっ飛ばしてない?
ぐるぐる考えながら、なんとか自転車をこいで家へと帰った。